生物学のおさらい:花

花粉・受粉

植物の授粉・受精について

問い:裸子植物の受粉・受精の様式について述べよ。me 

その前にちょっと、今咲いている、あのおしべがユニークな(=美しい)ギンバイカ属の花を愛でつつ、そのなかのフェイジョアについて、Wikipedia(20150617参照)に、「遺伝的に異なる個体間で受粉しないと結実しない(自家不和合性)」が「最近は自家結実し、食味の改良された個体が導入されている。」という記述があり、実際的な話として、2本植えなくてもよくなったのか、といったそこら辺も見たい。


赤いおしべがユニーク
フェイジョア:Feijoa sellowiana
(学名: Acca sellowiana、 科名:フトモモ科)



ギンバイカ(銀梅花・銀盃花 祝いの木 マートル)
(学名:Myrtus communis、 科名:フトモモ科)
フェイジョアと同じ、フトモモ科ギンバイカ属のこちらの白いおしべの数が凄い
ゲーテもミルテの花が咲くと歌う陽光の輝くイタリアの象徴

Callistemon speciosus2.jpg
"Callistemon speciosus2" by KENPEI - KENPEI's photo.
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ブラシノキ、別名:キンポウジュ(金宝樹)、英名 Bottlebrush
(学名:Callistemon speciosus、科名:フトモモ科)
学名のカリステモンはギリシャ語で「美しい雄しべ」という意味

受粉(pollination)

種子植物の受粉
受粉=種子植物において花粉が雌性器官に到達すること。
被子植物では・・雌蕊(めしべ)の先端(柱頭)に花粉が達すること
裸子植物では・・大胞子葉の胚珠の胚孔に花粉が達すること
1.自家受粉
・・・同一個体内での受粉
2.他家受粉
・・・被子植物では、自家不和合性、雌雄異熟(dichogamy)といった自家授粉・自家受精を防ぐ機構が発達した植物種も存在する。 それらの機構は、遺伝的多様性の維持近交弱勢の防止の役割を持っている。 (Wikipedia)
被子植物における受精は、二つの精細胞が、重複受精と呼ばれるユニークな過程を通じて利用される、珍しい過程である。

(1)卵の受精
(2)胚に栄養を与える内乳と呼ばれる栄養物質の形成

花粉は花粉管(pollen tube)を花柱を突き通るように伸長する。
糖質によって栄養を与えられた花粉管は、子房の中の胚種に到達するまで成長する。
その間に、花粉粒の管細胞内の雄原細胞はわかれて 二つの精細胞になる。
そのうちに、花粉管胚種内の杯嚢に到達する
胚嚢への侵入に際して、卵細胞の側面に位置している助細胞の一つが退化し、 花粉管が細胞内に入ってくる
花粉管の先端が破れて、二つの精細胞が放出される。

精細胞の一つは卵細胞と受精し、接合子を形成する。
もう一方の精細胞は、胚嚢の中央にある二つの極核と一緒になって、三倍体(3n)の初期の内乳の核を形成する。それはその後最終的に内乳となる。

受精が完了すると、胚は何度も分裂を繰り返し、発達する。
その間に胚を保護する組織が形成されて、種子ができる。(『現代生物科学━生物多様性の理解━』p103 大原雅 放送大学教育振興会 2014年刊)


胚乳(はいにゅう):種子植物の種子を構成する組織の1つ
内乳:種子植物の雌性配偶体である胚嚢に起源を持つ

重複受精(double fertilization) コトバンク 被子植物に特有の受精方法。胚嚢(はいのう)内で2個の精核が、1個は卵細胞と、他の1個は2個の極核に由来する中心核と合体する現象。受精卵は胚に、受精した中心核は胚乳に発達する。
被子植物の胚嚢において,胚嚢に達した花粉管から流出した雄核の1つは卵細胞と合体するが,このとき並行して,他の雄核は胚嚢の極核と合体をする。このように単に卵が受精するばかりでなく胚嚢極核が同時に合体することを E.シュトラスブルーガーが重複受精と呼び (1900) ,卵核と雄核の合体を生殖受精極核と雄核の合体を栄養受精とした。

受粉の研究は植物学・園芸学・動物学・生態学・進化生物学など多くの学術分野に関連しており、受粉に関する専門的な学術分野としては送粉生態学(花生態学・受粉生態学)、受粉生物学(送粉生物学)および花粉学"palynology"などがある。(Wikipedia)

https://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2000/00824/contents/119.htm コケ植物と裸子植物は海に戻ることができなかった。マングローブや藻場は、4億年以上前に上陸した緑色植物が、再び海に帰って生産を始めた回帰の場である。その生物多様性と生産量の高さは、今や人間生活にも欠かせないものとなっている。。1億5千万年前に被子植物が登場したことで、陸と海とは生物を介していっそう緊密さを増すことができた。

「自家不和合性 (植物)」Wikipedia(20150612)

自家不和合性 self-incompatibility

雌蕊と花粉との間の自己認識作用によって起こる事象
自家不和合性は、被子植物において自殖(自家生殖)を防ぐ最も重要な手段であり、新しい遺伝子型を作成し、地球上に被子植物が広がった成功の要因の一つであると考えられている。

被子植物種の半分が自家不和合性であり、残り半分が自家和合性であると推定されている

自己認識は柱頭上(アブラナ科・キク科)、花柱内(ナス科・バラ科・マメ科)、子房内(アカシア・シャクナゲ・カカオ)で行われる。

自家不和合性近親交配することができない(SI)植物
自家和合性(SC)植物

雌雄異熟

雌雄異熟は花序内の柱頭と葯の間の時間的重なりを最小化することによって間の花の干渉を低減することができる。

種子植物
Wikipedia20150620)

種子植物(Spermatophyta)は、植物のうち、有性生殖の結果として種子を形成するものである。維管束を持つ維管束植物に含まれる。
全植物の約8割を占め、大別すると、裸子植物門と、被子植物門に分かれる。

種子植物の祖先はシダ植物である。シダ植物は体の構造は陸上生活に十分適応していたが、前葉体の上での受精の際に水が必要である。

コケ、シダなど原始的植物は精子を水に泳がせて受精するが、被子植物など高等植物は 花粉管で直接精細胞を卵に届ける。

種子は前葉体を保護し、その中で受精をも行わせることで、外界の水に頼ることなく受精が行えるようにするためのものである。これによって、植物の陸上生活への適応は格段に進歩した。そのため極地などを除く世界中の陸上に進出し、大変な多様性を獲得するに至った。 また、種子が多くの栄養を蓄積する構造となったことで動物にとって重要な栄養源となり、それを巡って動物との間に共進化が進んだことも重要である。

種子散布については植物の方から動物を利用する場面も多く、同様な現象は花粉媒介を巡っても見られる。

現生種については、種子植物は生殖器官として"花"を持つことから顕花植物とも呼ばれるが、裸子植物では胞子葉と区別がつきにくいものもあるので、被子植物の花だけを花と呼ぶ考えもある。

化石植物であるがシダ種子類には、普通の葉に種子がついているものもある。種子は前葉体を保護する構造に由来し、花はその前段階である胞子を散布する構造に由来するものである。したがって両者は起源を異にし、まず種子を形成するものが生まれて、その後に雄性胞子を散布し、それを受け取る構造としての花が形成されたと考えられる。

裸子植物
Wikipedia20150620)

裸子植物 (らししょくぶつ、英語: Gymnosperm、学名:Gymnospermae)は、種子植物のうち胚珠がむきだしになっているもの。
ソテツ類、イチョウ類、マツ類、グネツム類を含む。現生種は約750種

裸子植物は種子を作るようになった最初の植物である。
種子はシダ植物における大胞子のうと、それを覆う構造から生じたもので、本来は胞子形成を行う葉の裏面にのっていたものである。シダ種子植物ではそのような状態が見られる。
しかし、多くの植物は胞子葉を特殊化させ、1つの枝先に集中して花を形成した。そのような中で、種子の元である胚珠は胞子葉の間に保護される傾向がある

被子植物では胞子葉が胚珠を包み込んで雌しべとなり、胚珠が外界から切り離されることで、その傾向がさらにもう1歩進んだと言える。
そのような観点で見れば、裸子植物は、植物界の進化に於いて、被子植物への進化の途中段階のものと見なすこともできる。

また、小胞子とそれに由来する雄性前葉体を小胞子の中に閉じこめて雌性胞子葉まで届ける、ということを行うようになった。これが花粉の起源である。

それに伴って、雌性胞子葉は花粉を受け止める役割を持つようになり、多くの裸子植物では雌雄の胞子葉はそれぞれに枝先に集まってまとまった構造を取るようになった。これがもう1つの花の起源である。

裸子植物においては花粉の媒介はほとんどが風によるもので、花には被子植物に見られるような装飾的な構造が欠如している。

最も初期の裸子植物はシダ種子植物である。古生代後期に出現した。シダ植物のような葉に種子をつけたものである。古生代末に環境が乾燥化するにつれ、イチョウ類、ソテツ類、それにキカデオイデア類が分化し、シダ植物とその地位を交代した。その後に針葉樹が分化し、中生代の地上はこれらの樹木に覆われた。
中生代末から被子植物にその地位を取って代わられ、現在ではイチョウ類・ソテツ類・グネツム類は少数の種が残るのみである。現生の裸子植物の大半は針葉樹であるが、温暖で湿潤な環境では針葉樹が優占する植物群落はまれで、寒冷な地域に広く分布する。そのほか、海岸や岩の上など、やや厳しい条件下で針葉樹を中心とする群落が生じる場合がある。
被子植物に取って代わられた理由の1つに、昆虫や鳥類などとのやりとりの少なさがあげられる場合がある。被子植物が、花粉媒介や種子散布にそれらの動物との関わり合いを持ち、それによって互いに影響しあって多様な姿のものを生み出したのに対して、裸子植物にはそのような例が少なく、これが勢力の逆転に大きく影響したという見方である。実際、裸子植物の花粉媒介には風媒花の例が圧倒的に多く、動物媒の例はほとんど無い。


馬渡峻輔・加藤雅啓・岩槻邦男 『植物の多様性と系統 (バイオディバーシティ・シリーズ) 』 裳華房〈バイオディバーシティ・シリーズ〉、1997年10月刊 

大胞子葉
イチョウ類
Wikipedia20150620)

現生の種子植物の中では、ソテツ類とともに最も原始的な性質を残した植物とされる。雌花(大胞子葉)は栄養葉(普通の葉)に似た形をしており、実際葉にギンナンのついた「お葉つきイチョウ」(Ginkgo biloba 'Epiphylla' )も見られる。

雌雄異株であり、雌花のみ咲く雌株と雄花のみ咲く雄株がある。
雄花は葉腋につき分岐しないで穂状、小胞子葉上に2〜12個の小胞子嚢(花粉嚢)をつける。
雌花は、胚珠が2〜10個があるだけの構造である。
種子は大型で肉質の外層がある。
ソテツ類と並び、種子植物でありながら、独立した精子を形成する。精子は胚珠が大きく育ってから、卵細胞のあるくぼみに放出される。

啓林館『理科総合B 改訂版』>第2部 生物の変遷と自然のつり合い

ソテツ類
Wikipedia20150620)

Cycas revoluta Thunb.
ソテツ類(ソテツるい)は、裸子植物の1群である。世界の熱帯、亜熱帯に分布する。
ソテツ類は、古生代末から中生代にかけて繁栄した植物で、現生のものは生きた化石と言ってよい。

花は茎の先端を大きく占め、雌雄別で、雄花は松毬を長く引き伸ばしたようなもの、雌花はめしべ(大胞子葉)を折り重ねた平らな形になる。個々のめしべを見ると、先端の方は羽状複葉の葉を縮めた形で、基部の方に左右に胚殊がならんでおり、いかにも胞子葉から出来たものだと思わせる。そのような形の雌しべが茎の先端に大きな集団を作るが、場合によってはその真ん中から再び葉が伸びる。いわば花の真ん中からまた茎が伸び出すわけである。

イチョウとならんで、種子植物でありながら、独立した精子を作ることでも有名である。
花粉は胚珠の先端に付着、発芽して花粉管を形成、その中に精子が作られる。精子は類滴形で多数の鞭毛をもつ。

明治29年 池野誠一郎博士により、世界で初めて精子が発見されたソテツ(蘇鉄):鹿児島県立博物館

http://sciencenet.cocolog-nifty.com/kisarazuizushima/ 裸子植物・イチョウ・ソテツは、植物の進化の最後に現れた被子植物と違い受粉は水を介して行っている。 イチョウ・ソテツたちは、シーラカンスと同じく、生きている化石といえる

ソテツ の花(おばな・めばな)http://www2.kobe-c.ed.jp/shimin/shiraiwa/sotetu/

基本的用語のおさらい

胞子 =生殖細胞

Wikipedia(20150620)
胞子葉(ほうしよう)というのは、胞子をつけるように分化した葉のこと
種子植物は胞子を形成しないが、シダ植物との関係をたどれば、雄しべが小胞子葉であり、雌しべが大胞子葉であることが分かる。
したがって、花というのは大小の胞子葉とそれを囲む複数の葉からなる構造である。 裸子植物では雄しべ・雌しべと呼ばずに胞子葉と呼ぶことも多い。特にソテツ類およびイチョウの胞子葉は栄養葉によく似ている。

大胞子 胞子に大小の二型があるとき,大きい方の胞子。 雌雄異型の胞子のうち、大形のもの。発芽して雌性の前葉体になる。種子植物の胚嚢(はいのう)に相当する。

小胞子
大小の胞子があるときの、小さいほうの胞子。発芽すると雄性の前葉体になる。種子植物の花粉はこれに相当する。

http://www.biol.tsukuba.ac.jp/
胚珠 (ovule) は種子植物に特有の構造であり、大胞子葉 (雌性生殖葉、被子植物の場合は心皮) についた雌性生殖器官

花粉 Wikipedia
花粉(かふん)とは、種子植物門の植物の花の雄蘂(おしべ)から出る粉状の細胞。花粉がめしべの先端(柱頭)につくことにより受粉が行われる。種子植物が有性生殖を行う際に必要となる。大きさは数10μmほどである。

加藤 雅啓:受粉様式・交配様式からみた異形胞子植物の進化に関する研究
同形胞子から異形胞子(大胞子・小胞子)への進化は生殖に関わる陸上植物の大きな進化の流れである。
異形胞子は自配受精を避けることができる点で有利であるとされ、同形胞子から異形胞子シダが、さらに裸子が進化したと解釈されている。裸子植物から被子植物への進化は単性花(生殖器官)で雌雄異株から、両性花(時に単性花)で雌雄同株への進化を伴って起こった可能性が考えられる。

裸子植物の受粉・受精の様式についてについて述べよ。me 

回答:受粉とは大胞子葉の胚珠の胚孔に花粉が達すること。裸子植物では、胚珠がむきだしになっている。
裸子植物では、花粉は胚珠の先端に分泌される液滴(受粉液)に付着して捕捉されると受粉液の吸収によって胚珠の内部に引き込まれ、発芽する。花粉が発芽後、成熟した花粉管になるまで数か月を要する 裸子植物の花粉媒介には風媒花の例が圧倒的に多く、動物媒の例はほとんど無い。風媒花であるマツの花粉は、空気を受ける袋状の構造を持つ

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