植物の基礎

植物生理 2

2012-08-13(月) 植物の生理(1)の光合成・呼吸・水の蒸散と吸収に続き、植物の生活環・花芽分化などの復習です。

植物の生活環(ライフサイクル)

生活環

一年草(annual plant)
発芽から種子成熟、植物枯死までの期間が1年以内の生活感をもつ植物
二年草:種をまいた後、満1年以上をへて開花するもの
栄養を貯蔵して成長を休止した期間に低温を感受して、抽台(ちゅうたい)し花芽分化を始める

二年生植物の例: タチアオイ
ジギタリス
アメリカナデシコ
パセリ
テンサイ
フダンソウ

一年草の生活環
種子の発芽 栄養成長
↓ 茎葉の生長
↓ 花芽分化 ・・・・・
生殖生長
・・・・・
↓ 開花
↓ 果実の発育
↓ 種子の成熟 ↓ (休眠)
↓ (種子の発芽) バーナリゼーション(
(越冬1年草の場合)
二年草の生活環
種子の発芽→茎葉の生長→貯蔵器官の発達 
種子の発芽 栄養成長
(第1年目)
↓ 茎葉の生長 ・・・・・・・・・・
緑色植物体
(バーナリゼーション)
・・・・・・・・・・
↓ 貯蔵器官の発達
↓  抽台
↓ 開花 生殖生長
(第2年目)
↓ 種子の成熟
↓ (種子の発芽) ↓ (休眠)

栄養成長: 発芽から茎葉の生長を経て花熟まで 
生殖成長: 花芽分化と花芽の発達、つぼみの形成や開花、受精から結実を経て種子が成熟するまで 
秋播き1年草: 花芽分化を促す、環境刺激が低温と長日によるものが多い 
春播き1年草: 環境刺激は日長などで、短日により花芽分化を始める植物が多い
多年草(perennial plant): 生育活動期に地下茎や肥大根を発達させて、そこに多量の有機養分を蓄えることができる。 
地上部が枯死しても、再生に必要な器官は生き残る

常緑多年草:冬季に地上部が枯死しない
例:ヤブラン
へメロカリスなど
(常に新しい個体と古い個体が一緒に1株の中で生存している)

木本植物(woody perennial plant)
園芸上では庭園樹、緑化樹、切り枝に用いる樹木を指す
成熟に要する樹齢に達してから、開花結実を行う
結果年齢になると、枝の芽は
花芽(flower bad)と葉芽(leaf bad) に分かれる
樹種によっては混芽(mixed bad)もある

冬芽(winter bad):

発芽と萌芽

発芽:種子や胞子が吸水を始めたのち、外部環境が適切な条件になると胚が発育を始めること
萌芽:多年草や樹木などの生長を停止していた芽が成長を始めること

発芽と水
発芽と温度
発芽と光
発芽と酸素
種子の休眠性
休眠:アブシジン酸など休眠促進部室が介在している 休眠の原因(表)

栄養生長と生殖生長

栄養生長 
光合成が活発に行われ、肥料・ミネラルが多く必要とする期間
栄養成長期の充実がその後の生育を促進する
先端成長(apical growth)
肥大生長(thickening growth)
部間生長(intercalary growth)
周縁生長(marginal growth)

生殖生長 
花芽分化、開花、種子や果実の結果とその肥大期をいう
植物が種子を作る目的のために生理を行う期間
朝会おは晩夏の頃、たん実(4~5日)を感知し花芽文化を始める
この時期は肥料、特にチッ素の施用をおさえる必要がある

頂芽優勢
茎や枝の頂部にある芽(頂芽)が下位の芽(側芽)よりも発育の良いこと
頂芽からオーキシンなど側芽の発達を抑える物質が移動してくるためにおこる現象
摘心や剪定は、頂芽を除去して側芽の発達を促進させるために行われる
光のある方に目が向く屈光性、根が下を向く屈地性もオーキシンが関与している

補足

Wikipedia:生活環(せいかつかん、Life cycle、Biological life cycle)    

生物の成長、生殖による変化が一通り出現する周期の一つを指す
動物のそれはたいてい簡単で、変化がないが、植物や藻類、菌類には多くの型があり、大分類において重要な特徴と考えられてきた。


※理科リンク集: 植物の生活と種類(中学1年生)
http://www.moka-tcg.ed.jp/yuuai/nsjh/rikaindex.htm

花芽分化・開花と環境

生育:発芽から出蕾まで
開花:出蕾から咲き終わりまで
結実期:子房の肥大から稔実まで

光周性と温周性

光周性
生物にとって季節を知るために信頼できるのが1日の昼の長さと夜の長さの季節変化
(1日の昼の長さと夜の長さの年変化は気温の年変化よりかなり正確)
光周性:季節を知りそれに生物が対応する性質

光周反応の模式図
Y軸 花成反応(到花日数)
X軸 日長(時間)限界日長


Wikipedia光周性(photoperiodism)

 昼の長さ(明期)と夜の長さ(暗期)の変化に応じて生物が示す現象である。
北半球では、昼の長さ(日長)は夏至で最長となり、冬至で最短となる。生
物は、このような日長変化を感知することで、季節に応じた年周期的な反応を行うと考えられている。日長の変化が動植物のホルモン生成と分泌に影響して生じると考えられている。


光周性による分類:一日の日長が一定時間(限界日長)より長くならないと反応が起きないことを長日性といい、花芽の形成が長日性である植物を長日植物という。(正しくは、長日植物とは、暗期が一定時間(限界暗期)より短くなると花芽が形成される植物のことである。)

花成誘導:長日植物、短日植物、中性植物、長短日植物、短長日植物、定日性(中間性)植物 花芽分化に必要な最長または最短の日長を限界日長(限界暗期)という

表:光周性のタイプ

光周性の反応タイプ (レスポンス・タイプ) 光周反応の様式 主な植物 備考
短日植物
(SDP)Short-day plants

一定時間以上の継続する夜(暗期)があると
着花
する植物

キク、シャコバサボテン、ポインセチア、エラチオールベゴニア、カランコエ、エクメア・ファッシアータ等  温帯地域に比較的多く分布する。赤道地帯はわずかな日長の差を感じるSDPがある
長日植物
(LDP)Long-day plants

一定時間以上の継続する夜(暗期)があると
着花しない植物

ヒヨス、ムシトリナデシコ、カーネーション、ペチュニア等 高緯度地域に比較的多く分布する
中日植物
(DNP)Day-neutral plants

日長に関係なく、ある一定の日数がたちある一定の大きさに達すると
着花する植物

ヒマワリ、セントポーリア、シクラメン、その他の四季咲き聖植物 低緯度地域、赤道地帯に比較的多く分布する
短長日植物
(SLDP)

最初に短日が与えられ、それに続いて長日が与えられたたとき
着花する植物

マツムシソウ、ホタルブクロ、ハナショウブ  
長短日植物
(LSDP)

最初に長日が与えられ、それに続いて短日が与えられたたとき
着花する植物

セイロンベンケイソウ、ヤコウカ、アスター  
定日性植物
(DDLP)

ある範囲内の日長下で花をつけ、日長がそれより短い、あるいは長い時は花数が減少したり、
着花しない植物

サトウキビ(品種F106) 、開花可能の範囲は12時間から12時間45分の間 中間性植物(intermediate plants)と呼ばれることもある
短日植物と長日植物の花芽形成の制御
暗期を短縮する手法: 電照

暗期の中央での光中断が最も有効
暗期を延長する手法: 遮光
終夜照明(日没から日の出までの証明)
朝方か夕方の4~8時の照明

温周性
気温の変化が植物の生育に影響する現象
園芸ナビ花の園芸用語辞典より: 温周性 thermoperiodicity
感温周期性、温度周期性ともいう。植物の生育適温は周期的に変動しており、夜の温度が昼温より数度低いときによく生長する。植物のもつこういう性質を温周性という。

休眠

植物のライフサイクルの中で、種子、球根、冬季越冬中の根株や枝の芽が一時的に生育を停止する状態に入る
その植物の生育に不適当な時期に休眠して生存維持を図るため
自発的休眠
他発休眠(quiescence)あるいは強制休眠(imposed dormancy)
花芽休眠相
花芽が形成されたあとと、花芽発達のある段階で休眠に入り、 一定の低温により休眠が破られてから新調し開花する発育をうをもつもの
温帯原産の木本屋球根に多く見られる
チューリップ、球根アイリス、、スイセン
これに対し、高温で破られた芽の活性が薄れ低温で春化されるユリ・フリージア
花芽休眠期の休眠解除のための低温とは異なる

開花調節で制御する発育相と節目

(発育相)   (節目)  
休眠・
ロゼット相
生長停止 休眠・ロゼット化
種子や球根などの貯蔵
幼若
(未花熟)相
生長開始 休眠・ロゼット打破、
種子発芽
花熟相

花熟 
花成誘導
生殖状態への生理的準備
生殖状態への生理的転換
花芽形成相 分化相

花芽形成開始

花芽原基分化

生殖状態への形態的転換
発達相  
花芽休眠
(花芽成熟)相
抽台 花茎の急速な伸長
開花・
結実相
開花  

春化(vernalization)

種子春化(seed vernalization)
緑色植物体春化(green plant vernalization)
いずれも幼若期の低温感応である
脱春化(ディバーナリゼーション)

カリフラワーやストックの早生き種のように
20Cで低温を感応するものもある


Wikipedia:春化

春化(しゅんか、Vernalization)とは、植物が冬の低温状況に一定期間さらされることによって、開花能力が誘導されることである。
英語読みにならってバーナリゼーションということもある。
特に人為的な低温処理を施す場合などには春化処理ともいう。
農業などで出荷時期を調整するために、春化処理を行って開花、結実時期を調節することもある。
また春化のあとに一定期間高温にさらされると、春化の効果が失われることもあるが、このことは脱春化(ディバーナリゼーション)という。

http://en.wikipedia.org/wiki/Vernalization

Vernalization (from Latin: vernus, of the spring) is the acquisition of a plant's ability to flower or germinate in the spring by exposure to the prolonged cold of winter.


ロゼット

カンパニュラや都忘れ等常緑性の多年草
ロゼット(rosette) 冬季葉が地際に根出(根生)葉のように群がって生育停止した状態になること 「バラの花飾り」
アブラナ科のキャベツ、大根、カンパニュラ、トルコギキョウなどの一・二年草
菊・ストケシア・スカビオサなどの多年草
菊では直立して伸びる茎をもつものを低温化に移動すると、茎の上部にロゼットが形成される

VR周性

栄養・生殖生長周期性(Vegetative-reproductive growth periodicity)
光周反応から見ると中性、温周反応では春化現象もない
開花にも特定の温度域をもたない
かなり広いか以下温度域をもつ植物群、四季咲き性といわれるものを指す
温度条件などがよければ、栄養生長と生殖生長が無限に繰り返される

発育に関与する植物ホルモン(植物成長調節物質)

植物の生理活性を左右するもの:植物ホルモンの存在
オーキシン IAA(インドール酢酸)落果の防止、頂芽優勢に関与、ホルモン系除草剤

ジベレリン GA3 休眠打破、光発芽種子の暗発芽化、長日植物の花芽形成促進、単為結果の促進、果実の生長促進、茎葉の生長促進、ブラインド(花枯れ)防止

サイトカイニン (アデニンの誘導物質)細胞分裂を盛んにする、老化の防止、耐寒性の付与、休眠腋芽の萌芽促進、シクラメンの開花促進、種なしブドウの処理

エチレン (アレロパシ―を起こす物質)花や果実の老化、落葉の促進、茎の伸長の抑制、休眠打破、分枝数の増加、花芽分化促進

アブシジン酸 (ワタの未熟種子から単離された落葉物質、落葉樹の芽はこの物質によって分化する)休眠誘導、側芽成長の抑制、短日植物の花芽形成促進、成長抑制

(一部のステロイド?)

植物成長調整剤(化学合成物質・・オーキシンに拮抗する物質)草姿調節、わい化
ポットナムのわい化(ウニコナゾール)
ハボタン(ダミノジット)
ポインセチアやハイドランジア(パクロプトラゾ―ル)
芝生(フルルプリミドール)

ちょっと読みたいサイト
※園芸植物の生長と発育を研究
http://www.bio.kpu.ac.jp/veglab/FUJIME-J.html

※日長処理に挑戦
http://iemaga.jp/garden/backnumber/2_vol36.html

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