
(以下『漢字植物園』コンテンツ目次より再掲)
円満字二郎先生の著作 『漢字の植物苑』(岩波書店2020)
岩波の『図書』に連載した、「漢字の植物園in広辞苑」を元にまとめたもの。
先生のは『広辞苑』に合わせて、「植物園」でなく「植物苑」というタイトル。
【洎夫藍・saffraan】 さて、「涼風の秋」の章の最後に取り上げるのは、サフランです。 明治の文豪、森鷗外に、「サフラン」というエッセイがあります。若いとろ、オランダ 語を勉強していた鷗外は、蘭和辞典でこの植物の名前に出会いました。そして、どんな花 かと思って、蘭医だった父にその干した花を見せてもらうのですが、その部分に、「サフ ラン」の漢字について、こんなことが書いてあります。
「サフランと三字に書いてある初
の一字は、所詮活字にはあり合せまい。
依って偏旁を
分けて説明する。
「水」の偏に「自」の字である。」
さて、鷗外先生が亡くなってから、およそ一〇〇年。それから時代は大きく変わり、活
字はおろか、コンピュータでも「サフラン」を漢字で表示できるようになりました。
『広辞苑』でもきちんと、由来はオラング語の「saffraan」で、漢字では「浪夫藍」と書く旨
が 示してあります。漢字にうるさかった鷗外先生も、きっと満足なさることでしょう。
「広辞苑」によれば、サフランは「アヤメ科の多年章。南ヨーロッパの原産」で、「一〇月頃、淡紫色六弁の花を開く」。イラスト入りなので、花や球根の形もよくわかります。
「洎夫藍」と書き表すのは、もちろん当て字。
それにしても、「洎」は、たしかにめった
に使うことがない漢字です。
私自身は、ある本を編集していたときに目にした、中国の古
い人名でしか、実際に使われている例に出会ったことがありません。
そのときにルビを振
るために調べたところでは、この漢字の音読みは「き」でした。
となると、「洎夫藍」は「きふらん」としか読めないのではないでしょうか? 博覧強
もって聞こえた鷗外先生が、それについて一言も触れていないのは、ちょっと納得
いかないなあ⋯⋯。
インターネットで検索すると、中国でも、サフ
ランを「洎夫藍」と書き表すことがあるようです。
「洎夫藍」を現代中国語で発音すると、「ヂフラ
ン」のような感じ。
少しだけ「サフラン」に近づ
きましたが、それでも、当て字として用いるには
ちょっと厳しそうですよね。
そんなふうに悩んでいたら、『広辞苑』に気になる記述を発見しました。
サフランと似ているけれど別の植物、「サフランもどき」の解
説文に、「日本では古くこれをサフランと誤称」と書いてあるのです。
そして、「園芸上は
属名のゼフィランサスで呼ばれる」と続いています。
「ゼフィランサス」であれば、「デフ
ラン」にかなり近くないでしょうか。
「洎夫藍」は、もともとは「サフランもどき」つまり「ゼフィランサス」に由来する当
て字だった、というのも、ありえないことではないように思われます。(p136)
以上、円満字二郎先生の著作を参照しつつ、漢字植物園コンテンツ作成、季節に合わせ秋の植物、「サイカチ」を見ました。・・
”歳時記よろしく、広辞苑片手につづる”という売り文句に合わせ、秋の植物 (以下各項さらに続く・・・・ )
ハギ ⇒(萩/芽子) kanji_hagi(20230914)
キキョウ ⇒(桔梗)kanji_kikyo(20230929)
ナデシコ⇒(撫子/瞿麦)(20231006)
コスモス ⇒(秋桜)(20231024)
ワレモコウ ⇒(吾
亦紅)(20231108)
ススキ ⇒(薄/芒)(20231109)
キク ⇒(菊)(20231110)
リンドウ⇒(竜胆)(20240909)
フジバカマ⇒(藤袴)(20241003)
キンモクセイ⇒(金木犀)(20241014)
カリン⇒(花櫚・榠樝・花梨)(20260904)
サイカチ ⇒(皂
莢)(20260904)
ケンポナシ⇒(玄圃梨)(20260904)
サフラン⇒(洎夫藍) ※このページです(20260909)
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