花の文化/漢字植物園

花櫚・榠樝・花梨

(以下『漢字植物園』コンテンツ目次より再掲)

円満字二郎先生の著作 『漢字の植物苑』(岩波書店2020)
岩波の『図書』に連載した、「漢字の植物園in広辞苑」を元にまとめたもの。 先生のは『広辞苑』に合わせて、「植物園」でなく「植物苑」というタイトル。

ケンポナシ
学名: Hovenia dulcis
科名:クロウメモドキ科
落葉高木。

ケンポナシは仙人の甘味

【玄圃梨】
山地の渓流沿いの斜面に自生する。植栽として、庭などに植えられる。
果実の見かけは枝つき干し葡萄のようなので、英語では"Japanese raisin tree"という。
中国名は「北枳椇」

辞書の編集担当者になると、職務上、その辞書を最初から最後まで、何回か通読することになります。
ただ、その内容が全部、頭に入るわけではありません。悲しいことにほと んどは忘れてしまうわけですが、中には、妙に記憶に残るものもあります。

私にとって、ケンポナシはそんな例の一つ。
「椇」という漢字がケンボナシという樹木 を表す、と漢和辞典に出ていたのですが、ことばの響きがおもしろくて、なんとなく、意 識の底に残ったのでした。
だいぶ経ってから、テレビ番組『探偵!ナイトスクープ』を観ていて、枝の膨らんだ部分が食べられることを知り、びっくらこいたものでした。

探偵!ナイトスクープ(Wikipedia)

『広辞苑』で「けんぽなし」の項目を見ると、ちゃんと「秋、花穂の枝は赤みを帯びて 肉質になり、甘味があり食用」と書いてあります。ただ、漢字での書き表し方は、「玄圃 梨」が挙げてあるだけです。(p132)

「玄圃」とは、文字通りには、黒い田畑といった意味。しかし、との場合の「玄」は、 発音が似通っているととろから「懇」と関係が深く、宙ぶらりん、つまり高い所に浮いて いることを表す、といわれています。

中国の伝説によれば、西の方に空高くそびえる崑崙こんろん 山の上には「玄圃」という仙人が住む場所があって、そこには宝石がゴロゴロしているの だとか。
驚いたことに、「広辞苑」にも「げんぽ」という項目がきちんとあって、「崑崙山上に あるという仙人の居所」と書いてあります。ということは、「玄圃」の伝説は、日本でも それなりに知られたものなのでしょう。

「探偵!ナイトスクーブ」では、ケンボナシのことを「てんぽぼなし」ともいっていま した。また、「広辞苑」にもあるように、「てんぼなし」という別名もあります。だとすれ ば、「けんぼなし」を「玄圃梨」と書くのは、当て字なのでしょう。
とはいえ、この当て 字を考えた人の頭の中に、仙人が住む山のイメージがあったと想像するのは、たのしいと とです。

以上のようなことを知ったあと、ある場所で、ケンポナシの「花穂の枝」にめぐりあう ことができました。人目をちょっと気にしながら軽くかじってみたととろ、口の中にはほ のかな甘味が⋯⋯。
「 仙界の味とは、あんな味をいろのでしょうね。 (Ⅳ 涼風の秋)(p133)

以上、円満字二郎先生の著作を参照しつつ、漢字植物園コンテンツ作成、季節に合わせ秋の植物、「ケンポナシ」を見ました。・・ 
”歳時記よろしく、広辞苑片手につづる”という売り文句に合わせ、秋の植物 (以下各項さらに続く・・・・ )

『漢字植物園』秋

涼風の秋の14種

ハギ(萩/芽子) kanji_hagi(20230914)
キキョウ(桔梗)kanji_kikyo(20230929)
ナデシコ(撫子/瞿麦)(20231006)
コスモス(秋桜)(20231024)
ワレモコウ(吾 亦紅)(20231108)
ススキ(薄/芒)(20231109)
キク (菊)(20231110)
リンドウ(竜胆)(20240909)
フジバカマ(藤袴)(20241003)
キンモクセイ(金木犀)(20241014)

カリン(花櫚・榠樝・花梨)(20260904)
サイカチ(皂 莢)(20260904)
ケンポナシ(玄圃梨)※このページです(20260904)
サフラン(洎夫藍) (20260909)

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