花の文化/漢字植物園

吾木香/吾亦紅/我毛香/割木瓜

(以下『漢字植物園』コンテンツ目次より再掲)

円満字二郎先生の著作『漢字の植物苑』(岩波書店2020)
岩波の『図書』に連載した、「漢字の植物園in広辞苑」を元にまとめたもの。 先生のは『広辞苑』に合わせて、「植物園」でなく「植物苑」というタイトル。

Sanguisorba x takahashihideoi
ワレモコウ
学名:Sanguisorba officinalis L.
科名:バラ科 
多年草
薬草として、根は生薬

ワレモコウの大いなる謎

かってのベストセラ―庄司薫の青春小説『さよなら怪傑黒頭巾』のシーン
「シワ寄せて、煙草すうかや、ワレモコウ」
(何を言ったってあなたの人生はもう秋でしょう、という意味)

『広辞苑』の「ワレモコウ」の項目の説明 では、「晩夏」に咲き、秋に入ると早々に終わってしまう。イラストにもある、素朴な味わいのこの花の実物を見ることができたのは、自分自身が薫君が腹を立てた相手のような、中年男性になってしまってから。

ワレモコウには、漢字での書き表し方がたくさんある。『広辞苑』では「吾木香」「吾毛香」「吾亦紅」の三つが上がってますがが他に、「割木瓜」もある。
名前の由来がはっきりしないので漢字ではどう書くのが適切なのか判断できない。

「地楡」:「ちゆ」と読むワレモコウの漢名

私としては、やはり「吾亦紅」がイチオシです。
「私もまた紅い」という意味、何に加えて「私もまた」なのか、「紅い」から何だというのかさっぱりわかりません。
「われ」と名乗りをあげているくせに、大いなるクエスチョン。そのアンバランスが、最高。

(以上は円満字先生 p110ー112から抜き書き)

wikipediaによれば、「吾亦紅」と書くのが現代では一般的である。

「 吾木香」については、キク科の植物で線香の原料にもなるモッコウ(木香)と似た香りを連想することから、「わが国の木香」という意味だといわれるが、実際にはワレモコウからあまり香りはしない。
名の由来には諸説あり、はっきりしていない 。
植物学者の前川文夫によれば、木瓜文(もっこうもん)を割ったように見えることからの命名という。
一説には、「吾もまた紅なり」とワレモコウ自身が唱えたことが名の由来であるといわれている。このほか、中国の皇帝がこの花の匂いを気に入り、「吾も請う」と言ったことに由来するのではなど、様々な俗説もある。

根茎を乾燥したものは地楡(ちゆ)という生薬になる。タンニンやサポニン多くを含む。


※前川 文夫(まえかわ ふみお、1908- 1984年)(wikipedia)

Japanese Crest Mokkou

※木瓜文 元は有職文様であり、瓜を輪切りにした断面や鳥の巣を図案化したとされており、子孫繁栄を祈る家紋唐の時代の中国で使われた有職文様の1つである窠紋(かもん)に由来(wikipedia)

窠は、元来動物の穴巣を意味しているが、転じて円形の区画を穴巣に見立てて、そのなかに唐花(からはな)が入っている文様を窠文という。(コトバンク
全国の祇園神社の多くが木瓜紋を神紋としている。

いろんな漢字があてられるという「季節の花300」さんの頁が特に良いですね。
https://www.hana300.com/waremo.html
「吾亦紅」 は  和歌、俳句などで 一般に使われる。 われもまた紅い、との意味、ということで、以下の三句が挙げられていました・

「吾亦紅   さし出て花の つもりかな」   小林一茶

 「吾木香   すすきかるかや 秋草の   さびしききはみ   君におくらむ」    若山牧水

 「吾も亦(また)   紅(くれない)なりと   ひそやかに」    高浜虚子

以上、円満字二郎先生の著作を参照しつつ、漢字植物園コンテンツ作成、季節に合わせ秋の植物、「ワレモコウ」を見ました。・・ 
”歳時記よろしく、広辞苑片手につづる”という売り文句に合わせ、次は、涼風の秋の植物 (以下各項さらに続く・・・・ )

『漢字植物園』秋

涼風の秋の14種

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