○多様な環境に生育するラン
ランの起源は被子植物の中でも浅く、他の顕花植物の中でもかなり遅れて出現したと考えられています。
ランが出現したころには、植物にとって有利な生育場所は、それ以前に出現した植物によってすでに占拠されていました。
ランが生き残るには条件の悪い環境に適応し、生育するしかありませんでした。
特殊な環境に適応するため、根や茎、葉のそれぞれが様々な形態に分化していったのです。
現在はラン科植物は全世界に約1000属、2万3000種存在します。
これは、25万種とも30万種とも言われている被子植物の1割前後を占め、分布域も熱帯から寒帯まで、砂漠のような極端な乾燥地を除く、あらゆる環境に生育しています。
一対一の関係
条件の悪い環境で子孫を残すためには、確実に受粉を成功させなくてはいけません。
より確実に、より効率よく受粉するため、特定の昆虫によってだけ受粉するようなつくりに進化してきました。
受粉成功のカギは花びらの形 ランの花の構造
単子葉植物のランの花は、花弁、萼片ともに3枚あります。
後ろの花弁のように見える部分が萼片で、手前の3枚が花弁です。
唇弁
本来ならば他の2枚の花弁と同じ形をしているはずですが、虫媒花であるランは花弁の一枚を変化させ、確実に送粉が行われるための飾りや仕掛けとしての役割を担わせました。
これが唇弁(リップ)です。
唇弁の形は特定の昆虫をおびき寄せるため、様々な形をしています。
ずい柱
普通、被子植物はおしべとめしべが別々になっていますが、
ラン科植物の多くは、おしべとめしべが合生して一本の柱になっている
「ずい柱」と呼ばれる器官を持っています。
花粉塊
ランの花はめったに訪れない特定の昆虫が訪れた時、
確実に多量の花粉を運ばせるため、
花粉が塊になっています。
ハンマーのような花
ドラカエア(Drakaea)
オーストラリア原産のドラカエアは変わったリップの形をしています。
この形は雌のジバチに似せています。
このハチは交尾のとき、葉の先にとまっているメスをオスガ抱えて飛んでいく習性があります。
ドラカエアの花はこの習性を利用しています。
オスがリップをメスと間違え、抱きかかえて飛び立とうとすると、
花粉のあるずい柱にたたきつけられ、花粉塊がオスバチの背中につきます。
花粉をつけたオスバチは、
また別のドラカエアに飛んで行き、
同様にして花粉をずい柱につけるしくみです。
*写真が見られるサイトhttp://www.trunkroom.co.jp/hana/Australian_flowers1/Australian_flowers1.htm
参考文献 みらい企画津「クレスのランものがたり」(全12巻絵本)唐澤耕司著
ハチの女王?
オフリス(Ophrys)
ヨーロッパ原産のオフリスも、花をメスのハチに似せています。
オフリスの花には目や羽があり、柔らかい毛までついていて、
オスバチをやさしく待ちかまえます。
メスバチと思いこんだオスバチは花びらに抱きつき、モゾモゾ動きまわり花粉をつけられてしまいます。
そして再びメスバチに似せたオフリスへと誘われ、受粉が成功するわけです。
*素晴らしい写真のあるサイト⇒http://blog.livedoor.jp/kent_cp/archives/50356252.html
Ophrys apiferaオフリス・アピフェラ
天然滑り台?!
スタンホペア(Stanhopea)
南米原産のスタンホペアは
見るからに奇妙な形をしています。
真下に伸びたリップからは、よい香りが漂っていて、
それを集めにシタバチがやってきます。
花弁はすべすべしていて、足を滑らせたシタバチがその下にあるずい柱へと
滑り落ちます。
ずい柱の先には花粉がついていて、シタバチの背中へとくっつく
仕組みになっています。
*写真や育て方があるサイト⇒http://yasashi.info/su_00022.htm下向きに垂れ下がる怪しげな花
Stanhopea wardii スタンホペア ワーディ
参考文献 みらい企画津「クレスのランものがたり」(全12巻絵本)唐澤耕司著
1巻 ホルンふきのクレス せかいのらんのたび
2巻 すてきなくちびる カトレア
3巻 おぼれちゃうよう コリアンテス
4巻 わ〜いすべりだいだ ゴンゴラ
5巻 ゆ〜らりゆらり ゆうれいラン
6巻 おおきなふくろ クマガイソウ
7巻 おいでおいでバルボフィルム
8巻 たたかないで ドラカエア
9巻 やっとみつにあえた アングレム
10巻 はちのそっくりさん オフリス
11巻 いのちのたんじょう ランキンとのであい
12巻 ぜんいんしゅうごう らんのこくさいかいぎ
世界の珍蘭奇蘭大図鑑―ミステリアスオーキッド 斉藤亀三著(誠文堂新光社)
「多くのラン
においては,唇弁シンベンが昆虫の止まり場になっていて」…
〈固有種が多く,変異の幅が広い〉
〈媒介昆虫に適した花形に進化〉
〈雌に「化け」,雄を誘う〉「偽交尾ギコウビ現象」
http://www2u.biglobe.ne.jp/%257egln/14/1417.htm植物の世界「多様なランをつくりだした共進化」
参考:朝日新聞社発行「植物の世界」