「植物はすごい」を読む

植物はすごい - 生き残りをかけたしくみと工夫 (中公新書)
田中 修 (著) (2012/7/24)  

 内容(「BOOK」データベースより)
身近な植物にも不思議がいっぱい。アジサイやキョウチクトウ、アサガオなど毒をもつ意外な植物たち、長い年月をかけて巨木を枯らすシメコロシノキ、かさぶたをつくって身を守るバナナ、根も葉もないネナシカズラなど、植物のもつさまざまなパワーを紹介。動物たちには真似できない植物のすごさを、「渋みと辛みでからだを守る」「食べられる植物も毒をもつ」「なぜ、花々は美しく装うのか」などのテーマで、やさしく解説。

以下目次読書

田中 修 著「植物はすごい」の目次読書です。

はじめに


めだたない"すごさ”
植物たちの一枚の小さな葉っぱがしている反応を、人間は真似することができない
普通の植物たちがもっている、誇示されるこののない”すごさ”
からだを守る知恵と工夫の”すごさ”の紹介

 

1. 自分の体は自分で守る

(一)「少しぐらいなら、食べられてもいい」

植物たちの成長力は”すごい”
何も食べなくても生きている植物たちは”すごい”
必要な栄養を自分で作り出せる植物たちは"すごい"
すべての動物の食糧を賄う植物たちは"すごい"
親離れ、子離れの良さは”すごい”
何も語らない植物たちの思いは"すごい"

  デンプンをつくれる、 アミノ酸をつくれる
動物に花粉を運んでもらう、実を食べてもらってタネをまき散らしてもらう
植物にと手「親の地盤を引き継ぐ」のは良くないこと(P12)

(二)食べられたくない

トゲは体を守る”すごさ”の象徴
トゲで体を守る植物たちは"すごい"
「刺さると、痛い」だけではないトゲは、”すごい”
少ないタネをトゲで守る植物は”すごい”
病気の原因にもなるトゲは”すごい”
ライオンを殺すトゲの"すごさ"(*)

美しくなくてもトゲはある(p20)
葉のトゲ
イラクサの漢名は(蕁麻疹の)蕁麻
*デビルズクロー(悪魔の爪)(p34)

2.味は、防衛手段!

(一)渋みと辛みでからだを守る

栗の実の堅い守りは"すごい"
渋柿の巧妙さは"すごい"
「痛み」で感じる味は"すごい"
ストレスで辛みを変える”すごさ”

柿:タネができあがるにつれてタンニンが不要性のものに変えられ(黒ゴマのようになる)甘くなる

(二)苦みと酸みでからだを守る

「苦み」の成分は?」
「えぐい」ってどんな味?
 酸みの力は”すごい ”
ミラクル・フルーツの思いは?

カタバミ(オキザリス:ギリシア語で「酸っぱい」)の葉で10円玉を磨くとぴかぴかになる(シュウ酸)

3.病気になりたくない!

(一)野菜と果汁に含まれる防衛物質

「ネバネバ」の液でからだを守る"すごさ"
タンパク質を分解する果汁の"すごさ"

パイナップルのブロメリン

(二)病気にならないために

かさぶたをつくって身を守る植物たちの”すごさ”
かさぶたをつくる

ハガキノキ(タラヨウ)葉に文字
バナナの皮の「メモ」

(三)香りはただものではない!

カビや病原菌を退治する”すごさ”
枯葉になっても親を守る”すごさ”

森林浴(アロマテラピー)
フィトンチッド=ロシア語で、フィトン(植物)、チッド(殺すもの)
ヒノキ(ヒノキチオール)、竹の皮、クスノキの葉(樟脳)、サクラ(クマリン)
 

4.食べつくされたくない!

(一)毒をもつ植物は、特別ではない!

有毒物質でからだを守る"すごさ"
身近にある"すごい"有毒植物
有毒物質で食害を逃れる"すごさ" 毒をもって共存してきた”すごさ”
地獄を生み出す"すごさ"(*)

ヒガンバナ:モグラを寄せ付けない、毒を抜いて救荒植物に(p111)
*「ソテツ地獄」:救荒植物としたが、毒抜きの知識が乏しかった?(p114)

(二)食べられる植物も、毒をもつ!

"矜持"を保つ"すごさ"
"擬態”でからだを守る植物たち
食べ方を戒める"すごい"果物 

5.やさしくない太陽に抗して、生きる

(一)太陽の光は、植物にとって有害!

紫外線と闘う植物たちの"すごさ"
まぶしい太陽の光と闘う"すごさ"

からだに当たると「活性酸素」(スーパーオキシド、過酸化水素・・)を発生させる(体の老化を促す)
抗酸化物質(代表:ビタミンC/E)をつくる植物(野菜・果実)(p138)

(二)なぜ、花々は美しく装うのか

花の色素は、防御物質
葉っぱや根や果実にも、防御物質
逆境に抗して、美しくなる”すごさ”
"皮”は実を守る 

植物が作る抗酸化物質:アントシアニンとカロテン(花びらを装う二大色素)(p140)
アントシアニンには容易に花色が変わるという性質がある(酸性に反応して、濃い赤紫色になり、アルカリ性が強くなるにつれて、青色から緑色。黄色へと変色)(p143)
ナノハナは放射性物質であるセシウムやストロンチウムを土壌から吸収する(p147)

6.逆境に生きるしくみ

(一)暑さと乾燥に負けない!

植物は熱中症にならない!
暑さと闘う"すごさ"
夜に光合成の準備をする"すごい"植物たち

CAM植物(Crassulacean acid metabolisum=ベンケイソウが行う代謝 メタボリズム) 代表:ベンケイソウ アロエ、パイナップル)

(二)寒さをしのぐ

熱力学の原理を知る”すごさ”
地面を這って生きる"すごさ" (*)

常緑樹など、葉っぱの中に凍らないための物質(糖分)を増やす
*ロゼットの姿で、場所を確保している意味もある

(三)巧みなしくみで生きる

”すごい”生き方をする植物
「肉食系植物」とは?
「根も葉もない植物」の”すごさ”(*)
ピーナッツの"すごい"かしこい生き方(**)

絞め殺しの木(蔓性)
ハエトリソウ
(*)ネナシカズラ、ラフレシア
(**)落花生 カサカサの殻、増水で移動  

7.次の世代へ命をつなぐしくみ

(一)タネなしの樹でも、子どもをつくる

タネがなくても肥大する"すごさ"
温州ミカンは、子どもをつくる
パイナップルもタネをつくる! 

イチゴの表面のタネから出る「オーキシン」が果実を肥大させる

(二)花粉はなくても、子どもをつくる

「無花粉スギ」でも、タネをつくる
イネがもたらした"すごい"発見

薮田貞次郎のシベレリンの発見は、世界に誇れる科学的業績のひとつ (p2」20)

(三)仲間とのつながりは、強い絆

地下に隠れて、からだを守る”すごさ”
イギリスで嫌われる”すごさ”(*)
子どもを産む葉っぱの"すごさ" 

ドクダミ茶は「動脈硬化を予防したり、利尿作用がある」(p223)   *イタドリ=「ジャパニーズ・ノットウィード」

おわりに


私たちは、植物たちを五感で感じます。
葉っぱや花の色から優しい気持ちが生まれ、芽がすくすくと伸びる姿から生き生きとした元気をもらいます。
心で味わう植物たちの存在は、私たちの心の栄養になっている。私たちにとって植物の存在はそれで十分なのかもしれません。でも、もう一歩踏み込んで「植物たちの生き方に思いをめぐらせてほしい」
そうすれば、植物たちが、私たちと同じしくみで生き、同じ悩みをかかえ、その悩みを解くために懸命に努力している姿を知ることができます。
「植物との共存・共生」の時代といわれる二十一世紀を、私たちが豊かに生きるための強い糧になる

 

参考文献


植物の私生活-デービッド-アッテンボロー(1998)

ふしぎの植物学―身近な緑の知恵と仕事 (中公新書)2003
雑草のはなし―見つけ方、たのしみ方 (中公新書)2007

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