園芸の基本 (4)

繁殖の方法

株分け(division)

株分けの時期は、その目的が増殖化株の更新かによっても異なるが一般には花芽分化との関係で決められる
花芽分化期に株分けすると花芽分化が停止し当年もしくは翌年の開花が見込めない場合がある
夏から秋に開花する植物は、花芽分化期が春以降であるから、生長する前の早春に行う

株分けを行う利点 増殖目的だけでなく、株の更新や大株化による生育の衰えを回復させる

手軽、確実、開花までの期間が短い

  株分けの種類と方法  地下の根茎や地下茎から生ずる新しい根系(地下茎)が発生したものを株分けする

芽を中心に株分けする
根茎部の芽にしたがって株分けする

 
わき芽や分枝を分ける 地下の母枝の側芽、 茎または枝条の地下部の節あるいは側芽から苗条が伸長し、発根しているものを取り出して分ける  多くの花木に見られる。ボケやアジサイ
雪柳
南天、シモツケ、コデマリ、ライラック、山吹、千両、万両、ボタン、クサツゲ、ハクチョウゲ
ダイアンサス、テランセラ
根の不定根が伸びて発根 大部分の宿根草
 
芽を中心に株分けする 根茎部の芽にしたがって株分けする  ダリアや芍薬のように前年に成長した茎の基部に芽をつける植物は、古い茎を切り分けて1芽または2~3芽に分け、塊根をつけて分ける
芽のついた地下茎(根茎)を切り離して株分けする  カンナ、アリストロメリア、アマドコロ、ラン類、桜草
地下茎の節の芽で株分けする スズランのように地中に延びる地下茎の節に発生する芽を取って増やす
ランナー   イチゴ、ユキノシタ、オリヅルラン、シダ植物の一部
サッカー(吸枝)  地中を横に伸びる匍匐枝、各所から根や芽をのばす
冬至芽 
キク、ノコギリソウ、ハマナス
オフセット  茎の基部から直接新しい植物体(芽)を生じさせるもの  アナナス類、サンスベリア、オモト

特殊な繁殖法

むかご (肉芽) 山の芋、子持ちマンネングサ
(珠芽) オニユリ、スカシユリ開花まで3年以上を要する
木子(きご)  グラジオラス、クロッカス、ユリ
鱗片繁殖  ユリ  3~5年で開花
アマリリス、ヒヤシンス  開花まで3~5年以上を要する
芽体(葉縁に発生した不定芽)による繁殖  ベンケイソウ科

組織培養(tissue culture)

細胞の持つ分化全能性による再生を応用した技術

植物体再生の経路と植物増殖技術


図集・植物バイテクの基礎知識 大澤勝次/農文協1988)
培養部位 植物体の再生経路 増殖技術 適用作物
茎頂 茎頂伸長 → 多芽体誘導
(腋芽えきめ誘導)
カーネーション、イチゴなど多数
→PLB誘導 ラン類
→苗条原基誘導 アスパラガス、メロンなど
→マイクロチューバ誘導 じゃがいも、やまいもなど
胚発育 →完熟種子 全ての種子繁殖性作物
胚軸 →ダイレクト →器官形成
(人為的な茎頂の誘導)
→不定芽誘導 フキ、アンスリウムなど多数
細胞 →脱分化(カルス) →細分化
→上へ(器官形成)
→下へ(不定胚形成) 
プロトプラストなど →ダイレクト 不定胚形成
( 人為的な胚の誘導) 
→不定胚誘導 ニンジン、メロンなど多数

組織培養を行う理由(利点)とその方法


ウイルスフリー苗
品種改良技術(胚培養、 細胞融合技術など)
ウイルスフリー苗 茎の頂部にある生長点0.1~0.3ミmm程の大きさの芽を摘出して培養する カーネーション、宿根カスミソウ、キク、ラン類、スパティフィラム、アンスリウム、イチゴ、サツマイモなど
品種改良技術 胚培養、
胚珠培養、
細胞融合術など 
最近の多くの園芸植物。ペチュニア、トレニア、デルフィニウム、撫子、アリストロメリア、シクラメン、プリムラ

交配(crossing)

同一種や種など2個体間で受粉を行うこと
特に遺伝型の異なる個体間での交配を交雑と呼び、区別され得ることがある。
交配を行う理由
品種の維持と種子生産
園芸品種は稔性が低いことが多い。品種や系統の維持、販売用の種子の生産のため  固定品種

一代交配種(F1品種) 雑種第一代は固定していないが形質ははそろい雑種強勢により両親より生育旺盛なすぐれた形質を発揮す
近年の園芸植物のF1品種化に伴って、 交配による親株の選抜や維持、F1種子の採種に交配は欠かせないものとなった

新品種の作出

交配の方法
事前調査 花器の構造を明らかにする、結実習性・結実条件、開花習性(開花時刻、期間、柱頭の受精可能な期間、花粉の昨日の持続期間)を明らかにしておく
事前調査 花器の構造を明らかにする、結実習性・結実条件、開花習性(開花時刻、期間、柱頭の受精可能な期間、花粉の昨日の持続期間)を明らかにしておく
除雄 自然交雑や自家受精を避けるため、
交配予定の株の有髄を開葯前に除去
虫や風による受粉を避けるため、袋で花を覆う
(開花1~2日 前のつぼみを選び花弁と雄蕊を切り取る)
花粉の準備 交配する花を袋で 覆う 紙袋をかけクリップで基部を止めておく
交配(受粉) 花粉親の花を萼の基部から花ごと切り取って開葯した花粉を雌ずいに押し付ける 2,3日してから、交配しようとする花から採取した花粉をめしべの柱頭につける
袋かけ 他の花粉による受精の影響、雨などによる濡れ 直射日光の影響を防ぐ 紙袋をかける
ラベルをつける(交配日、母親名、花粉親名を明記)

剪定(pruning)

剪定

整枝(training) 剪定によって結果枝の健全な成長をはkり、火災類や果樹などの収穫を得る多芽に、合理的な樹形に仕立てることを目的とする
整姿(trimming) 植栽の目的にあった樹形や枝ぶりを作り出すこと
剪定を行う理由
植物体の健全な育成と、その植物が本来持っている樹形(草姿)の美しさを発揮させる

剪定の方法
剪定の時期
花芽分化の時期を理解して行う

開花様式による分類

今年伸びた枝に花芽をつけ 今年中に開花する (夏から秋に開花) 冬から春先の萌芽前の剪定が可能 アベリア、サルスベリ、ノウゼンカズラ、ハギ、フヨウ、ムクゲ等
越冬し、翌年の春の萌芽前後に開花する  花芽が冬の低温に遭遇することが開花条件
剪定は花後に行う
もしくは徒長枝(葉芽)の剪定を夏季か冬季に行う
頂芽に花芽をつける クチナシ、ツツジ、ツバキ、ハナミズキなど
側芽に花芽をつける ウメ、サクラ、ハナズオウ、ボケ、モモなど
頂芽と側芽に花芽をつける レンギョウ
越冬し、翌年の春に新しい枝を伸ばし、その先端に花をつける 前年の枝の頂芽や側芽に花芽をもち、混合芽をつける  前年の開花枝にはよい花をつけないことが多いので、枝を切り戻し、開花位置が高くなりすぎないようにする  アジサイ、タニウツギ、ハコネウツギ、アジサイなど

花芽分化の時期

分化期 植物名 花芽の位置
3月下旬~4月上旬 ハクチョウゲ A 頂芽
4月中旬 ザクロ A
4月下旬 サルスベリ B
5月上中旬 ハクモクレン B 側芽
5月下旬 ムクゲ B
6月上旬 アカメヤナギ B
サンシュユ A
6月上中旬 シャクナゲ A
6月中旬 ミズキ B
6月中下旬 サザンカ A
フジ B
レンギョウ B
6月中旬~8月中旬 ツツジ A
6月下旬~8月中旬 サクラ A Cえき芽
サツキ A
6月下旬~7月上旬 ツバキ
7月上旬 ジンチョウゲ A
ハナズオウ C えき芽
7月上旬~8月上旬 ウメ B
7月中旬 カイドウ B
ライラック 頂部のB
7月中旬~9月上旬 クチナシ A
7月下旬~8月下旬 ボタン B
8月上中旬 ドウダンツツジ B
モクセイ B
モモ B
8月中旬 ニワウメ A
8月下旬~9月上旬; ボケ A
9月上旬~10月上旬 コデマリ/td> B
ユキヤナギ A
10月上中旬 アジサイ A

花木の花芽のつき方と剪定

枝先に花芽がつくタイプ 春から延びた枝の先端近くに花芽ができる 花芽形成後は、わずかに剪定するだけでも花芽を失う
幹に近い枝のつけ根できると花つきは少なくなるが、翌年の花芽はつき、比較的しなやかな樹形となる
ハナミズキ、サツキ、シャクナゲ、アザレアなど
節につくタイプ 伸びた新梢の節に花芽ができ、冬をこして花が咲く 開花前に軽く切り戻し選定ができる 梅、桃、ボケ、トサミズキ、オオデマリなど
冬季には花芽がないタイプ 冬の間、春の萌芽前に剪定する 落葉後に、今年伸びた枝を枝元から切り落とすと大きな花が咲く ムクゲ、ハギ、サルスベリ、アメリカデイゴなど
枝の剪定方法

枝おろし、枝すかし、切り戻し(切り返し)、刈り込み

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