園芸の基本 (3)

繁殖と交配

breeding:厳密には植物自らが受粉・結実・種子散布・分球等を行い、自己と同じ種類の個体または個体群を再生すること
種子繁殖:種子(実生)による繁殖と、 栄養体(枝、球根、組織培養など)による繁殖
人為的な植物の増殖法としての栄養繁殖、種子による系統の維持や新たな雑種個体作出のための交配について

挿し木・挿し芽

挿し穂の採取部位、
用いる器官、
穂の熟度、
挿し穂の基部の切り方、
挿し床の種類で分ける

挿し木で増やす主な一・二年草、宿根草、観葉植物


(園芸装飾必携)
枝挿し フヨウ、サルビア、ゼラニウム、コルジリネ、ドラセナ、ユッカ、ブラッサイヤ、シェフレラ、ツピダンサス、パキラ、クロトン、ハイビスカス、フィカス 
芽挿し (省略) 
葉挿し イワヒバ、グロキシニア、サンセベリア、セントポーリア、ベゴニア、ぺぺロニア、ベゴニア。レックス、ストレプトカ―パス、シャコバサボテン、カニバサボテン、クジャクサボテン、月下美人 
根挿し オニゲシ、芍薬、ストケシア、日本桜草、ブーバルジア、ペラルゴニウム、パンノキ、コルジリネ 

挿し木で増やす主な花木・庭木・果樹


(園芸装飾必携)
枝挿し (省略) 
芽挿し コノテガシワ、サワラ、沈丁花、杉、ツツジ、ツバキ、ヒノキ、マサキ、吉野杉 
根挿し アカシア、アメリカデイゴ、エンジュ、桐、草ボケ、庭漆、沈丁花、ナンキンハゼ、偽アカシア、野茨、フウ、藤、藪コウジ、ライラック

挿し木の類別(採穂部位による)

leef cutting
葉挿し
全葉挿し
(葉柄挿しを含む) 
レックス・ベゴニア(葉脈に切れこみを入れるか、一部に窓を開ける)
セイロンベンケイソウ(葉縁部の着生芽→葉胚)
セントポーリア葉柄挿し(葉柄を5mm残す長いものより優れる)
カランコエ、ペペロミア、グロキシニアなど
片葉挿し(葉片挿し) サンセベリア(5~10cm)
アロエ、カニバサボテン、レックス・ベゴニア
葉芽挿し
葉1枚とその葉の腋芽に茎の一部をつける
枝挿しに発育劣るが多量に苗を得たいとき
菊、ダリア、アフェランドラ、インドゴムノキ、バラの台木、アジサイ、ツバキ、マサキ、茶、柑橘類(主として常緑樹 )
stem cytteing
枝挿し(茎挿し)
芽挿し(挿し芽)    ブドウ・イチジク、アジサイなどの草本類の再生力の高い植物、斜め挿し
緑枝挿し
新梢の挿し木
天挿し(頂芽挿し)
管挿し(腋芽挿し)
半熟枝挿し
成熟の進んだ新梢の挿し木
熟枝挿し
(休眠枝挿し) 長梢挿し(10~20cmの穂木)
春挿しの穂木は2月中にとり、挿し木時まで土中に埋蔵
一般に切り口は水平でよいが、木本類は返し切りをすると発根が促進される
rootcutting
根挿し(根伏せ)
根系片を挿し、不定芽不定根を形成させる
地上部の枝では活着が難しいもの
木本は5~10cmの根・・柿、ズミ、マルバカイドウ、ナシ、クルミ、スグリ、藤、ボケ、ユキヤナギ、蝋梅,アメリカデイコ、牡丹、柳
草本では2~3cmに切って斜めまたは水平挿し・・シュウメイギク、日本桜草、ガーベラ、ストケシア(ピートモスやミズゴケをかけておく)

発根・発芽に必要な条件
内的要因


根原基の在非と発根
ポプラ:根原基があり挿し木が容易
カルス形成と発根 (とくに関係が認められないが、一般の植物では挿し穂の吸水力がカルスによって増大する
貯蔵物質の多少と発根   挿し穂の中の栄養分
マサキ・・芽の下部の長い茎の方がが発根する
デンプン含有量が多くタンニン含有の少ないアジサイ、ムクゲ、イボタノキ、レンキョウなどは発根が容易
逆にデンプン含有量が少なくタンニン含有の多いのモミジ、カラマツ、ヤマモモ、ウバメガシは発根が困難
挿し穂の熟度
秋挿しは新梢がよい、フル枝を用いても発根するのは生育の旺盛な南天、柳、ドラセナなどに限られる
ツツジなどの梅雨挿し  ツバキの夏挿し(8月上旬)
葉面積が多いほど発根作h用に有利だが、その分蒸散量も多くなりしおれやすくなる
目安としては10~15cmの常緑広葉樹では3~4枚
小 葉で発根率の高いマサキや沈丁花では7~≐8枚

発根・発芽に必要な条件
外的要因


温度
床土の水分
空中湿度
(密閉挿しによる保湿)

(日当たりのよい側の枝から挿し穂を取る)
酸素
:高い濃度の方が発根が促される
20%が最適(普通の生育には7%程度でよい、その3倍)
ミスト挿し
PH(土壌酸度)
多くの樹種は弱アルカリ性の範囲でよく発根する

ツツジ類 酸性土壌でよく生育 鹿沼土を床土
ルバキ、サザンカ 弱酸性;
西洋シャクナゲ   PH3.6~4.0で最大
ポプラ属 多くは PH6.0~7.8で最大
ギンドラ、モニリフェラ、ヤマナラシ PH7.8で最大
シマンドロ PH6.0で発根率最大

挿し木・挿し芽の方法


挿し穂の採取 消毒(火炎や70%アルコール)した鋭利なナイフや刃物
採穂は挿し穂の調整を考慮しやや長めに行う
サボテンなどの多肉植物やアナナス類は、切り口からの腐敗を防ぐため、半日陰で傷口を1週間ほど乾燥させてから挿す
挿し穂の調整
大きさをそろえる(管理が容易となる) 多すぎる葉は葉柄を残さずに取り除く
大きな葉は朱脈と直角になるように1/2~1/3に切り詰める

水揚げ
木本植物は、最低でも数時間、草本植物は30分から1時間
単に水を補給するだけでなく、発根阻害物質を洗い流す効果
キクなど水にぬれると腐る葉は倒れないように工夫しておく
オーキシン処理しても効果が認められないものも、蒸散抑制や、ミスト挿し・密閉挿しにより発根の効果が認められるようになった


切り口の形
水平切り、斜め切り、返し切り、割りなど
本年枝だけでは軟弱で腐りやすい場合に前年枝の一部をつける。撞木挿し、踵挿し
一般に、軟材挿しの場合は水平切りで、葉の節の1ミリほど下できる

団子挿し
無菌的な心土(粘土質)で切り口を包む
空気要求度の高いものは切り口周辺近くが砂になるように砂を餡とした団子を用いてもよい

発根促進剤(植物成長調整剤)(※)
オーキシン
水揚げ時に商品名:オキシベロン液剤
オキシベロン粉剤、ルートン、トランスプランンド(合成オーキシン)
発根をうながす殺菌剤
商品名:タチガレン(夏場の腐りの多発するころの挿し芽に効果発揮)

挿し床の用土
肥料分がふくまれておらず、清潔で未使用もしくは消毒した用土を用いる
粒径が小さく整っている鹿沼土や赤玉土、バーミキュライト、調整ピートモスの単用もしくは混合

容器
深鉢、浅鉢、育苗トレイ、セルトレイ、小型プランター、発泡スチロールなど 最近では保湿機能付きの育苗装置も市販されている(※)

露地挿し・床挿し
(庭や畑の一部に挿し床を作って挿す)
20cm掘りあげ土をふるってゴロ土をより分ける
ふるった部分を平らにしてゴロ土をもどす
その上にふるった土を戻す
庭が粘土質の場合、深さ10cmほど掘ってゴロ土を戻しふるい落ちたた土で周囲を高くする、その中に川砂とピートモスを6:4の割合(容積比)で混ぜたものや、赤玉土や鹿沼対の微塵土を抜いたものと川砂を6:4に混ぜた土を入れる

軟材挿し・・穂木と同じくらいの太さの誘導棒を用いて挿し穴をあける
そこに挿し穂を入れよく圧し、切り口や穂の周囲を土に密着させる (誘導棒・・挿し穂を傷つけずに一定の深さに挿す役割)

緑枝挿し・・かすかに穂の葉が触れ合う程度
挿し穂の深さは穂の長さの1/2 か2/3程度
休眠枝では、切り口から発根するものは斜め挿し、
各所からdるものは直立挿しとする
頂芽優勢の強いものは斜め挿しの方が枝数が多くなる

露地床・・深さ15cm位に土を掘り、そこに穂木を並べて土を7cmほどかけてよく踏む
皿に土を入れて頂部の芽が出るようにして手で圧する

枝がやや太い休眠枝挿しの際は、挿し穂上部の切り口から雑菌の侵入や穂の乾燥が予想されるため、切り口に融合剤(接ぎろう)を塗布

一般的な管理方法・・風の当たらない明るい日陰で管理し、生育適温より若干低温度になるようにする。しばらくは乾燥させないようにたっぷり潅水する
密閉差市の場合には、高温や過湿による葉の腐れに注意すし、適度に喚起し、洛陽がある場合はカビの原因にならないように早めに取り除く
発根したら、少しずつ日光に当て、冠水を控えて乾かし気味に管理ししだいに外の環境に慣れさせる。
2,000~3,000倍に希釈した液体肥料を適宜潅水の代わりに与える。

発根の確認と鉢上げ・定植
確認は鉢底から伸長した根を見るか、挿し穂を軽く押さえて少しひいてみて手ごたえがある
発根すると勢いのある濃い緑色の新芽と葉を展開する
その後ポットへ1本ずつ鉢上げするか、半日陰の露地圃場に定植

※最近では保湿機能付きの育苗装置も市販されている
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[カルスメイトは、樹脂を主成分とした特殊製法により、 傷口を被膜保護して、カルスの形成を早めて癒合を促進させる塗布剤」とあり・・※Wikipedia:カルス(callus)の説明より、コトバンクの方がわかりやすい。物体に傷がついたとき,その傷の周囲に二次的につくられる分裂組織が形成する組織。


接ぎ木

接ぎ木(grafting):植物の一部を他の植物体に接着して組織の癒合をはかり、独立した個体に養成する方法

接ぎ木を行う理由

挿し木や種子では繁殖が難しい場合
土壌への適応や土壌病害から守るため
葡萄は、根にフイロキセララ(Phylloxera、ブドウネアブラムシ)という害虫が寄生する。この害虫の抵抗性台木(アメリ葡萄)を使用することによって害虫の被害を防げる
果菜類は、土壌病害抵抗性の台木に接ぎ木し病害のリスクを軽減したり、低温期の生長を促したりさせる
キュウリ、メロン、スイカ、真桑瓜、ナス、トマトなど大量の接ぎ木苗が生産されている
バラの切り花用苗のほとんどが接ぎ木苗

早期開花・結実を得るため
接ぎ木により樹勢を弱め早期に開花・結実させる
リンゴは中間に矮性台木を接ぐことで収穫を維持したままで収穫可能な木の高さを低くし、作業性が大幅に改善された

樹勢の回復をはかる、樹形の整形
比較的寒さに弱い柿を耐寒性の強いマメガキを台木にする
老化した巨木の整形


接ぎ木の難点

性質が均一な台木を用意するのが難しい
台木の養成に時間がかかる、接ぎ木技術が素人にはむずかしい
接ぎ木苗の寿命が短い
台木と穂木に親和性がある


接ぎ木の種類

切り接ぎ 養成された台木の1年生枝の上に、主として1~2芽を有する1年生枝を接ぐ  
割り接ぎ 台木の中央部分に切り込みを入れ、薄くくさび状に切った穂木を形成相に合わせるようにして再こみ、結束もしくはクリップで挟む 果菜類
呼び接ぎ   カエデ類、ツバキ、クチナシ、木星、モッコク、梅もどき、ハクレン、モクレン、タイサンボク、蝋梅
野菜でキュウリ、メロンなどの胚軸も柔らかいもの
芽接ぎ 芽と少量の木質部をつけた樹皮をはぎとり、台木の樹皮内に挿入するか、削傷部に接着する バラ、桃

台木、接ぎ穂の選び方


台木の種類
野菜 割り接ぎ
穂木より早く播く、無病で茎が太く、根張りのよい台木を選ぶ
スイカなどは、子葉が展開した播種後1週間程度の苗が適する
カボチャ(キュウリ)、ユウガオ(スイカ)、赤ナス(ナスビ)、台木用耐病性品種(トマト、メロン)
庭木 健全で太くまっすぐにおく新調し、充実した株を選ぶ
細い枝や徒長した枝、地際から複数の枝が分枝したもの、節の多いものは作業性が悪い。また活着率にも影響する 

接ぎ木の方法


基本的な注意事項
接ぎ木の適期をはずさない(春の切り接ぎと秋の芽接ぎ)
貯蔵期間中に穂木を乾燥させない
よく切れる刃物を使用
作業のスピードアップ
結束

落葉樹の切り接ぎ 台木の樹液が上昇しはじめる直前に、休眠状態の深い穂木を接ぐと活着がよい
芽接ぎ  8~9月上旬が適期

台木の切り下げ方法


接ぎ木  接ぎ穂の作り方
台木の切り下げ方法
挿しこみと合わせ方
結束と乾燥防止
切り接ぎ

充実した枝の先端と基部数cmを除いた中央部
5~7cm、短く、枝に2芽残る様に切断
(上の芽を伸ばし下の芽は予備)
鋭利な刃物で下の芽の反対側から基部に向かって2~3cm、
わずかにに木部にかかるように、平滑面になるように削ぐ
さらに反対側を鋭角に切り返す

地表5~7cmの所で台切り
根の張りだしている面で凹凸が少なく肥大している部分の台切りした肩を僅かに削り、木質部にかかる程度に2~3cm切り下げる。
穂木の低部の形成層と舌状部の形成層が密着するようにする
太さがほぼ同じであると削ぎ面と切り下げ面の形成層を合致させることができる
割り接ぎ 長めに切って水に入れる ビニールトンネルで保護し、よしずをかけておく
密閉期間は、施設内で 7日、露地では7~10日、ツバキなどは10~14日
ビニールを下面から少しずつ刷り上げるようにして喚気 を行い、10日くらいかけて除去
結束は活着の様子を見て早めに取り除く
呼び接ぎ  台木も穂木も根つきのまま枝の一部を2センチぐらいに平らに削ぐ しっかり形成層を合わせて結束する
活着後、必要部分を残し決断 
芽接ぎ 

充実した葉芽を取る、葉芽と花芽の区別が困難な場合には、枝の元の方の芽か徒長枝から取る。
太さ1センチ程度のものがよい 
切り口は一般にはT字型


芽は台木の切り口に合わせてとる。長さは2.5~2.7cm程度。やや上の方に芽が来るようにとる。 葉は切り取るが葉柄を少し残しておく。(これは後日活着の成否を判定する指標として重要)
ビニールテープで結束するがあまりきつく縛らない方がよい、乾燥を防ぐために(癒合剤)接ぎろうを塗る
活着は10日ほどでわかり、葉柄部に軽く触れるとポロリと落ちれば成功。触れても落ちないようであれば失敗なので、ただちに接ぎ直すとよい

取り木(layering)

親株から枝状を切り離すことなく土中もしくは空中で不定根を発生させ、発根後に枝条を切り離して独立した個体に養成する方法
時期は一般には20~25 Cで発根が促進されることから、落葉樹であれは樹液の動く前もしくは直前の3月前後
※枝条(しじょう):木のえだ。樹枝。

取り木を行う理由(利点)
接ぎ木と比べると技術的に簡便で確実に増やすことができる
(挿し木ができない樹種でも繁殖できる)
常時母体から養水分の供給を受けながら不定根を形成する
(大きい苗を作ることができる)

取り木の種類
高取法
地伏せ法(先取り法)
盛り土法
取り木の方法 高取法 環状除皮
地伏せ法
傘取り 撞木取り

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