円満字二郎先生の著作『漢字の植物苑』(岩波書店2020)
岩波の『図書』に連載した、「漢字の植物園in広辞苑」を元にまとめたもの。
先生のは『広辞苑』に合わせて、「植物園」でなく「植物苑」というタイトル。
ツツジ
学名: Rhododendron L.
科名:ツツジ科 APG IV
英名: Azalea
【躑躅】
二文字合わせて四十二画といういかにも難しそうな面構え。
音読みすれば「てきちょく」で。漢和辞典では「たちもとおる」という古雅な言葉で説明される。ある場所から動けなくなる様子を表す言葉。
「春の訪れ」の章で紹介したアセビ(馬酔木)と同じ事情がある。
五~六世紀の中国の学者、陶弘景(とうこういけい)は、「羊躑躅」という植物について、「羊がその葉っぱを食べると、「躑躅」して死んでしまう;と述べている。つまり、ツツジには動物を動けなくしてしまうような毒がある。
毒性と持つのはレンゲツツジ。
十六世紀の李自珍(李自沈):『本草綱目』有毒の「羊躑躅」のほか、子どもが食べても大丈夫な「山躑躅」がある。
「山躑躅」という中国語に対応した「やまつつじ」という日本語があるのに、「羊躑躅」に対応した日本語は一般的な言葉として存在していない。
明治になるまで日本ではヒツジはあまりなじみのある動物ではなかったから。
(以上は円満字先生 p36-37から書き抜き引用)