植物図鑑

ヘレボルスの展示2009

クリスマスローズとは?


(掲示内容)
キンポウゲ科ヘレボルス属の多年草
日本では「クリスマスローズ」という名称が ヘレボルス属の総称として定着していますが、 本来「クリスマスローズ」とは、 イギリスでクリスマスの時期から咲きだす 早咲きの原種「ニゲル(Helleborus nigerのことを指します。
ただし、ヘレボルス属の標準和名として認められているので、 国内では「クリスマスローズ」と呼んでも誤りではありません。 また、数多く流通している交配種(園芸品種)は、 主要な交配親が原種の 「オリエンタリス(Helleborus orientalis)であったため、 以前は「オリエンタリス・ハイブリッド」や単に 「オリエンタリス」と呼ばれていました。
しかし、実際には オリエンタリス以外の交配親を使用したものも存在するため、 現在では「ヘレボルス・ヒブリドゥス」(Helleborus×hybridus)や 「ガーデン・ハイブリッド」と呼ばれるようになっています。

学名:Helleborus niger;Helleborus lividus
Helleborus orientalis ;Helleborus odorus;
Helleborus foetidus; Helleborus argutifolius

(*ヘレボルス展2006掲示 代表的な原種のヘレボルスの学名 6種
科名:キンポウゲ科


栽培の歴史

(掲示内容)
クリスマスローズ栽培の歴史は古く、 紀元前の古代ギリシア文明の時代からすでに栽培され、 中世ヨーロッパでは薬草として利用されていました。
1600年代になって、貴族の間で観賞用として栽培され始め、 その後、庭や植物園などでも一般的に植栽されるようになりました。
1700年代後半には、原種が学術的な研究対象とされていたとの 記述が残っています。
品種改良が本格的に始まったのは1800年代後半で、 主にドイツやイギリスの育種家が自生地から採取した原種をもとに、 さまさまな交配を始めました。
その後盛んに品種改良が行われ、 第一次世界大戦前までにはヨーロッパ全土に普及し、 一般的なガーデニング材料として利用されるようになりました。
日本には明治初頭に薬用植物として導入されましたが、 下向きに咲く趣のある姿から、茶花としても楽しまれていたようです。


原種の分布

(掲示内容)⇒ 拡大図(1024px×767px  78KB)
20(24)の名があげられています。


クリスマスローズの自生地

(掲示内容)
クリスマスローズの原種は、現在のところ約20種に分類されています。
ヨーロッパ全域、地中海沿岸、西アジアなどに分布し、 チべタヌス(H.thibetanusu)だけが 他種から離れた中国の四川省、湖北省中心に自生しています。
また、ヴェシカリウス(H.vesicarius)は唯一 砂漠地帯(シリア〜トルコ)に自生しています。
自生地の標高は、海岸付近の低地から2000メートルを超える山岳地帯まで様々ですが、 一般に石灰岩が分布し、傾斜のある落葉樹林、雑木林や 岩の多い場所に自生しています。
必ずしも日陰だけでなく、日当たりのよい場所にも分布しています。
気候は、日本よりも夏の気温が低く、雨量が少なく、 気温が高くても乾燥しているのが特徴です。
寒さに強いものがほとんどですが、例外として アーグチフォリウス(H.argutigolius)、 リヴィダス(H.lividus)、ヴェシカリウス(H.vesicarius)などは、 温暖な地中海気候や夏に高温で乾燥するステップ気候の影響を受け、 耐寒性が強くありません。


品種改良

(掲示内容)
20世紀後半に、新しいタイプのクリスマスローズの育種が始まります。

イギリスの育種家ヘレン・バラード(Helen Ballard)は、 60歳になってからクリスマスローズの品種改良を始めました。
マジョルカ島、コルシカ島、アルプス地方やコーカサスなどの自生地を 訪れて原種の研究を重ね、優れた形質を生かしながら、 それまでなかった鮮明な花色、丸弁のカップ咲き、 小輪から中輪、上向き、丈夫で育てやすい、ということを 品種改良の目標としました。
その結果、約20年の間に53もの品種を作出したのです。 作出された品種の中には。現在の黒花系品種や鮮明な黄色系品種 の元となったものが含まれています。


ヘレン・バラードと同時期に活躍した、イギリスの育種家、 ワッシュフィールドナーセリーのエリザベス・ストラングマン(Erizabeth Strangman)も、 偉大な功績を残した一人です。 グリーンスポットの”オールド・アグリー” 濃い青紫色の“クィーン・オブ・ザ・ナイト” ”リトル・ブラック”などの品種を作出しました。 また、1971年にモンテネグロで 原種トルカータス(Helleborus torquatus) の八重咲き変異体“イーニアス”と“ダイドー”を発見。 この”ダイドー”をもとに、八重咲き系統パーティドレスグループが作出されました。

この二人の育種化が活躍したイギリスから、ドイツ、オランダ、 フランスなどのヨーロッパへ広がり、現在ではオーストラリア、 ニュージーランド、アメリカ、日本など様々な国で 品種改良が進められています。


花のいろいろ

(掲示内容)
花のいろいろ 構造
花弁のように見えるのは萼片で、通常は5枚で構成されます。
本来の花弁は退化して蜜腺(ネクタリー)になっています。
花の中心部にはめしべがあり、その周りを雄蕊が囲んでいます。
雌しべが先に成熟してから雄しべが開いて花粉を出し、受精すると脂肪が膨らんで種ができます。
花弁(のように見える萼片)
シングル…一重咲き… 本来の花弁は蜜腺に
セミダブル…半八重咲き… 蜜腺が筒状の小花弁に
小花弁には色や模様が入る…アネモネ咲き、唐子咲きとも呼ばれる
ダブル…八重咲き… 蜜腺が完全に花弁化したタイプと、萼片が多弁化したタイプがある。 華やかでボリュームがあり、近年人気が高まっている。 パ^ティドレスグループが代表的な品種群。
花の咲き方
カップ咲き… 満開時でも杯状にまでしか開かないタイプ
平咲き… 満開時に花弁が水平まで開くタイプ
筒咲き… 満開時に筒状になっているタイプ
変種のフェチダスやヴェシカリウスがこのタイプ
交配種ではあまり見られない

花の模様


(掲示内容)
ノンスポット スポット フラッシュ、 アイ ブロッチ ベイン
ネット バイカラー、 ピコティー ダークネクタリー


品種名について

(掲示内容)
ごく一部の交配種には園芸品種名が付いていますが、市販されている大部分の交配種日は園芸品種名がなく、
「ピコティ」や「ダブル」「アネモネ咲き」などの花の色や形の特徴を表現した名称がつけられています。
これは、主にクリスマスローズが種で生産されていることによります。
原種…自家受粉した種であれば親とほどんど同じ形状の株が得られる。
交配種…いろいろな原種を繰り返し交配して作られてきたので、
自家受粉した種でも形状にばらつきが生じ、親と全く同じ形状の株を得ることが難しい。
⇒これでは品種として安定しないので、正式な園芸品種名を付けることができない。
株分けをすれば確実に同じ花が咲きますが、大量に生産できないという欠点がありました。
しかし最近では、バイオテクノロジーー技術を利用した組織培養が一般的になり、
クリスマスローズの生産にも利用されています。
メリクロン苗…もととなる親株の一部を組織培養して生産されたもので、 株分けと同じように親株と同じ形状の子株が大量に得られる。
⇒形状が安定しているので、園芸品種名を付けることができる。
また種から生産されたものは、同じ花を大量に作ることができないからこそ、一株ごとの希少価値が生まれます。

*種苗メーカー ミヨシによるメリクロン増殖法の展示(2006)


ミヨシのクリスマスローズ ★@楽天市場★

植え付け


(掲示内容)
適期… 秋〜春… 最適期は、成長を始める10月
鉢植えのポイント
鉢のサイズ
根がよく張っている株…二回りほど大きな鉢に植え替える。
根がほとんど張っていない株…水はけのよい土で、購入した時と同じサイズの鉢に植え替える。
原種…一回りほど大きな鉢に植え替える。

植え替え方法 秋に行う場合
根を洗って古い土をすべて落とし、黒く変色したいたんだ根を取り除いてから植え替える。 (健全な根は、先端が白いので注意)
冬から春に行う場合。
開花期が近いので根は完全にほぐさず、根鉢 を軽く崩す程度にして手植え替える。 秋になったら根を完全にほぐして植え替える。
用土
水はけのよい土を使用。 市販の草花用の培養土は、 軽量化するためにピートモスを多く配合しているので、 クリスマスローズには水持ちが良すぎるため、 赤球土や鹿沼土、日向土などの軽石を混合し、 水はけを良くいてから使用する。
配合例
赤球土(小粒):軽石(小粒):腐葉土=4:4:3 赤球土(小粒):鹿沼土(小粒):軽石(小粒):腐葉土:くん炭=3:1:2:3:1

置き場所
年間を通じて風通しがよく、蒸れにくい場所で管理。 地面やコンクリートの上に直接置くと、 風通しが悪くなって害虫や病気が発生しやすくなったり、 熱がこもって蒸れてしまうので、花台やレンガなどを使って、 鉢の下に風が通るくらいの隙間を作る。 秋から春は日当たりのよい場所に置くが、夏は半休眠状態になるので、 梅雨など長雨が続くと過湿になるので、雨の当たらない場所に移す方がよい。

庭植えのポイント
庭に植えつける適期は秋。 苗を庭に植えつけると、開花までに時間がかかるので、開花株か開花見込み株を使用。
植え替え方法
1.夏に直射日光が当たらない場所を選び、直径深さとも約40センチ程度の穴を掘る。
2.腐葉土2リットル。バーク堆肥5リットルと緩効性肥料を規定量加え、 掘りあげた庭土と混ぜる。
3.植えつける株の根鉢を崩して洗い、古い土を落とす。
4.地際の芽が隠れない程度の深さに植えつけ、たっぷりと水を与えて完了。



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