「魔女の薬草箱」の第4章

西村佑子さんの「魔女の薬草箱」を読む:第4章

西村佑子さんの「魔女の薬草箱」 me 

山と溪谷社 (2006/4/1) 初めの目次読書⇒第4章→第1章第2・3章
  第4章 「賢い女」の薬草
1 「賢い女」と魔女
2 聖母マリアと薬草
3 アルテミスとヨモギ
4 ヒルデガルト・フォン・ビンゲンと薬草
5 薬草魔女
6 性的癒しの薬草
7 「賢い女」の薬草料理  

第4章 「賢い女」の薬草 
1「賢い女」と魔女

紀元4世紀 テオフラトス『植物誌』
紀元1世紀 プリニウス『博物誌』
中世・・「賢い女」と呼ばれる女性たち 古来の伝統と知識によって生活の知恵を受け継いだ:民間薬
パラケルスス(1429-1541)・・「これまでの薬学は年老いた女たちのおかげである」
16-17世紀 魔女狩りの標的
ドイツの医薬分業は1240年に確立していた

第4章 「賢い女」の薬草 
2 聖母マリアと薬草

マリアの被昇天の日(8月15日)から誕生日(9月8日)までの約一か月を「聖母マリアの30日」といい、この期間にはマリアの祭壇に薬草の束が供えられる。(p133)
薬草の束は、9種類、15種類、77種類、99種類の薬草からつくられる。
バンベルクの聖ミヒャエル教会の天井には578種類の薬草が描かれ、「天国の庭」といわれる。

Kloster Michaelsberg Mittelschiff.jpg
"Kloster Michaelsberg Mittelschiff"

St. Michael in Bamberg (Germany)

「バンベルクは魔女狩りの中心地の一つであった」Wikipedia20150608参照

マリアと結びつく植物は多い
ユリ(聖ガブリエル):イタリア・ルネッサンスの画家によって初めて描かれた(受胎告知)
薔薇の園に座るマリアの絵も多い。
当時のバラやユリが現代のそれと同じだと同定することはできないらしい。
旧約聖書雅歌の「私はシャロンの薔薇」・・ドイツ語では「スイセン」と訳される。最新の研究では『シャロンのバラ」はヒヤシンス、谷間のユリは、スイセンという説(p136)

[セイヨウハゴロモグサ]

Lady's Mantle.jpg
"Lady's Mantle" by Mom the Barbarian - Flickr. Licensed under CC BY 2.0 via Wikimedia Commons.

葉がギザギザしているので、露がその中にたまる、清々しい

学名:Alchemilla mollis 科名・バラ科
漢字で:羽衣草
ドイツ語で「婦人のマント」(Frauenmantel)
英語でも同じく(Lady's Mantle)
女性のための薬草
聖母マリアは彼女のマントを大きく広げて庇護してくれるという
元北欧神話の女神フレイアに捧げた草だった

Memorials in Frauenkirche, Munich - DSC08640.JPG
"Memorials in Frauenkirche, Munich - DSC08640" by Daderot

The Frauenkirche in Munich (Church of Our Lady) 1510年頃


第4章 「賢い女」の薬草 
3 アルテミスとヨモギ

[ヨモギ(蓬)]

学名:Artemisia
科名:キク科

地下茎などから他の植物の発芽を抑制する物質を分泌する。この現象をアレロパシー(他感作用、allelopathy)と言う。(Wikipedia

学名がギリシア神話の女神アルテミス(ローマ神話のダイアナ)と関係があるように思われるが、紀元前4世紀頃、医術の心得のあった、ペルシアの王妃のアルテミスに由来するという説が有力。(p139)
お産を軽くする、また堕胎剤になる、婦人病に効く
ドイツ語で「足のそばに」(Beifuss)という: 足の疲れにくくので、旅人は靴に入れて旅した

ニガヨモギ(Artemisia absinthium) 」アニス系の独特のにおいがする
昔はアブサン酒の香りづけに使われたが今は禁止されている(神経をマヒさせる作用がある)
へイクスピア研究家は、『夏の夜の夢』のホレぐすり(菫の汁)の呪いを解くのは「月の女神の花の汁」=ヨモギかニガヨモギだろうと推測している
一説によれば、セイヨウニンジンボク(Vireix agnus ‐castus):その果実は黄体ホルモンの分泌を促す

※ シェイクスピアには何の600種を超える花の名前が出てくる
ヨモギは見た目には全く地味な植物であるが、東洋でも西洋でも、昔から活用されてきた(p142)

第4章 「賢い女」の薬草 
4 ヒルデガルト・フォンン・ビンゲンと薬

(独: Hildegard von Bingen, 1098 -1179)は、
中世ドイツのベネディクト会系女子修道院長であり神秘家、作曲家。
ドイツ薬草学の祖(Wikipedia20150608閲覧)

Hildegard von Bingen.jpg
"Hildegard von Bingen" by Miniatur aus dem Rupertsberger Codex des Liber Scivias..

『道を知れ』(スキウィアス:「神の道を知れ」)の挿絵。

50才を超えてから7年かけて『フィジカ 自然の治癒力』という大著を書きあげた 200種類上の植物。
神の声は頭上から直接彼女の脳内に入り込んできたという。その様子を描いたもの、1141-1151(p143 )

ヒンゲンSaint Hildegard of Bingen.は植物を温と冷に分け、それぞれが対抗することによって体内のバランスを取るのだと考えている。
良い香りは悪霊が作る病気の予防になるといい、薬草が魔除けに果たす役割について多く語っている。
ヒルデガルトの自然観は現代のエコロジー運動の原点として受け止められるようになった(p145)


Eibingen・・http://www.eibingen.de/pfarrei/hildegard.html

第4章 「賢い女」の薬草
5 薬草魔女

ドイツには薬草魔女という言葉がある。女性解放運動の中で新しい見方を獲得しプラスイメージに転換。
例:ガブリエレ・ビッケル


[セイヨウノコギリソウ]

学名:Achillea millefolium
科名:キク科
仏蘭西語で「大工草」
ドイツ語でシャーフガルベ(羊を健康にするもの)、「ヴィーナスの眉」
イラクのシャンニダールの墓から8種類の薬草が発見されたがその一つ(紀元前6千年)
学名は古代ギリシアの英雄アキレウスに由来:トロイア戦線で負傷した部下たちの傷をこれで直したという。
止血草、兵士草、傷草
英語でヤロウ
ハーブティー・・不眠症にセイヨウカノコソウ、 風邪にカモミールティ・・
薬草を扱う薬局がドイツにはたくさんある

第4章 「賢い女」の薬草 
6 性的癒しの薬草 

ドイツのクロイターテー
ウイキョウ茶、イチョウ茶、ヤドリギ茶、オオバコ茶、カモミール茶、ローズヒップ茶、
整腸茶、風邪予防茶、鎮静茶、催眠茶、降血圧茶などの薬草箱
ハーブティーのティーバックの自動包装機械は1929年にドイツの会社が発明
心だけでなく、身体(性・情欲)に対する悩みの解決にも


[ヘンルーダ]

学名:Ruta graveolens
科名:ミカン科

イノンド
"Illustration Anethum graveolens0".

[イノンド]

学名:Anethum graveolens
科名:セリ科
普通英名でディル (dill)と呼ばれる香味用薬草:消化を助ける
(※p152の学名 graveloensは間違い)

[ウォーターミント]

学名:Mentha aquatica
科名:セリ科
和名:ヌマハッカ、水ハッカ
さわやかなハッカの香り
ミントの種類と写真図鑑

第4章 「賢い女」の薬草 
7 「賢い女」の薬草料理 

ドイツ語にヘクセンケッセルという言葉がある・秘薬を煮る魔女の大なべ
よく見かける鍋をかき回す魔女の絵
ヨーロッパには魔女人形を台所に飾る習慣がある。
キッチンウィッチという台所のお守り。北ドイルの冬の郷土料理 グリューンコール(緑のキャベツ)煮」霜が降りて葉が凍った後に料理した方が甘みが増して味が格別になる 春はベーアラオホのピューレ
フランクフルト大聖堂の@「最後の晩餐」の絵の子羊にかけられた「フランクフルターグリューネゾーセ」(フランクフルトのグリーンソース:パセリ・クレソン、アサツキ、チャービル、スイバ、ポリジ、ピンプネレの7種)


[聖木曜日の緑野菜]

復活祭前の木曜日=プロテスタント:聖木曜日;カトリック:洗足木曜日
ドイツ語で「グリューンドンナースターク」
英語で「悔いの木曜日」(Maundy Thursday)
どんな野菜が選ばれたのか、 日本の春の七草のようにしっかりと決まっていないが、 詩人ゲーテはこの日に必ずホウレンソウを食べたという。
フンボルト(1769-1859) は、コバノカキドオシ、クレソン、静養ノコギリソウ、ヒナギク、ヘラオオバコのレシピ


[コバノカキドオシ]

学名:Glechoma hederacea
伝統的な「聖木曜日のスープ」 
「花冠草」(Kranzkaraut)
日本では「疳取り草」=小児の疳やひきつけを鎮める、「垣通し」=繁殖力が強く垣根も通り抜ける

 

[マイボーレ]

五月柱(マイバウム)・・昔の樹木崇拝の名残
古代では、オーク、ナラ、シラカバ、ドイツトウヒなどの樹木に神が宿ると信じられていた。
特に白樺は春の生命と蘇りのシンボルなのでマイバウムの木としてよく取り上げられる。この行事と組むように、マイボーレ(Maibowle)=五月のパンチを飲む
レシピは9世紀まで咲かのボツ 材料
花の咲く前のクルマバソウの葉の小束
黒スグリの葉 15枚
ペッパミント・エストラゴン・セージ・サラダバーネット・コモンタイムの葉を各2~3枚
砂糖150グラム以下
白ワイン1本・シャンパン1本 つくりかた 薬草類はゆるく縛って、砂糖と容器に入れ、ワインを2分の1注ぐ
1時間後薬草の束を取り出す
シャンパンは飲むときに直接グラスに注ぐ 。クルマバソウの葉を浮かべる


[クルマバソウ(車葉草)]

学名:Asperula odorata(アスペルラ)
科名:アカネ科
ドイツ語では森の親方、森の母の草、5月の母の草、心の喜び草など別名がたくさんある
枕に入れる薬草の一つ
※村佑子さんのブログ:西 ドイツ魔女街道を旅してみませんか? 魔女の料理(3)瓶詰のマイボーレ。薬草の店やスーパーでも売っている

※これも学名がGaliumu odoratumとなっていた(p165)⇒四季の山野草
me 西村佑子さんの「魔女の薬草箱」  を読
第1章 魔女と薬草第2章  魔女と魔除け
第3章 魔法の薬草第4章 「賢い女」の薬草

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